貿易実務の概要については『貿易実務のお仕事って?』で紹介させていただきました。
今回は商品を輸入するにあたって、具体的にどんな仕事をしていくのかを紹介していきたいと思います。
輸出編はこちら⇒『貿易実務のお仕事 ~輸出編~』
輸入の流れ
輸入はこのような流れで進んでいきます。
発注
↓
仕入れ先からの船積み連絡
↓
乙仲業者手配・書類提出
↓
貨物の受入れ
↓
代金の送金
代金が前払い・後払いかによって、送金のタイミングが異なります。
今回は後払いのパターンで説明させてください。
また、取引先とのやり取りはメールで行うものとします。
発注
海外の仕入れ先へ発注することから輸入業務がはじまります。まずは仕入れ先に注文書を送ります。
希望納期は絶対に必要な日付ではなく、少し余裕をもたせた日付を指定しておきます。
この理由は2つです。
■仕入れ先が納期交渉をしてきた場合のゆとりをもたせるため
ギリギリの納期を指定して、納期交渉された場合は一切譲ることができません。
「なんとかこの納期でお願いします。」と一点張りするしかありません。
しかし、1週間余裕をもって指定していると、「じゃあ、1週間遅らせてもいいのでなんとかなりませんか?」とこちら側が少しゆずる形で、もう一度、納期確認をすることができます。
こちら側が譲っているので、仕入れ先ももう一度納期調整をしてくれます。
そのため、本当に必要な日までに入手できる可能性が高くなります。
■船の遅れや通関検査にひっかかる可能性があるため
台風で船がスケジュール通りに到着できないかもしれません。
悪天候で飛行機が飛べないかもしれません。
運悪く通関検査にひっかかって、貨物の引き取りが遅れるかもしれません。
小さなトラブルはいくらでもありえますが、日にちに余裕があれば焦らずに対処できます。
これらは発注自体を早めにしておくことで、回避することも可能です。
それでも念のため、希望納期も少し早い日を指定することをおすすめします。
仕入れ先からの船積み連絡
仕入れ先側で船積みの準備が整ったら、船積み連絡(Shipping Advice、S/A)がきます。このときに下記書類が添付されているはずです。もし添付されていなければ、請求してください。・インボイス(invoice、INV、I/V)
・パッキングリスト(packing list、P/L)
・船荷証券(Bill of Lading、B/L)もしくはAWB
また、必要に応じて、下記書類も先方から取り寄せてください。
・原産地証明書(certificate of origin、C/O)
・安全データシート(SDS)
・取扱説明書、図面、写真など商品を説明できるもの
もし原本が必要で発送してもらう場合は、使用した国際宅配業者とその送り状番号も合わせて確認をしてください。
乙仲業者手配・書類提出
国際宅配便(クーリエ)で出荷してもらった場合は基本的にすることはありません。ただし、簡易通関ではなく、一般通関に切り替えたい場合はクーリエ業者に連絡しましょう。
その場合は、SEAやAIRの場合と同様に書類を提出してください。
SEAやAIRで出荷された場合は乙仲業者に連絡して、通関依頼と配達依頼を行いましょう。
この時に必要な書類は下記の通りです。
必須書類
・インボイス(invoice、INV、I/V)・パッキングリスト(packing list、P/L)
・船荷証券(Bill of Lading、B/L)もしくはAWB
輸入する貨物内容によって必要な書類
・原産地証明書(certificate of origin、C/O)・安全データシート(SDS)
・版権元からの輸入許諾書
・食品届
・評価加算申告に必要な書類
・取扱説明書、図面、写真など商品を説明できるもの など
はっきり言って、貨物の内容次第です。
必須書類だけで済む貨物は本当に楽です。
しかし、貨物によってはさまざまな資料が必要になります。
普段から輸入している商品であれば、どんな書類が必要かご存知だと思います。
一方で今まで取り扱ったことのない商品を輸入する場合は少し警戒が必要です。
輸入することが決まった時点で、乙仲さんに普段とは異なる書類が必要ないか確認しておきましょう。
輸入通関時に「○○の書類も提出してください」と税関さんに言われてから準備を始めていたのでは、貨物の引き取りが大幅に遅れる可能性があります。
引き取りが遅れた場合、そのあとの配送用に手配していたドレーやトラックもキャンセルして、再度手配して…と手間が増えます。
しかも、キャンセル料も取られます。
このようなことが起きないように、前もって確認をしておいてくださいね。
貨物の受入れ
通関が無事に終わり、輸入許可が下りればこっちのものです。運送業者に指定した日時・場所に貨物を届けてもらい、受け取りましょう。
受け取った貨物は開梱する前に、外装の状態でわかる傷やへこみなどがないかを確認してください。
万一、異常を見つけた場合は貨物の全体と異常部分の写真を撮るようにしてください。
そのあとで開梱をおこない、中の商品に触れる前に、開梱したそのままの状況も写真に残しておいてください。
これらは商品に損害が出ており保険申請をする際に大切な資料になります。
カートンがひどく潰れているからといって、慌てて開梱しないように気を付けてくださいね。
代金の送金
無事に貨物が受け取れたら、インボイスに記載されている期日までに忘れずに送金手配をしてください。送金完了すれば、1つの船積み案件が完了したことになります。
お疲れ様でした。
まとめ
スムーズに正しい輸入通関ができるよう準備することこれが輸入のポイントだと思います。
正直、特別な書類が必要ない貨物の輸入はとても簡単です。このような輸入しかしたことがない人は、「輸入なんて誰でもできるよー。輸出のほうがめんどくさい。」と言うかもしれません。
確かに特別な書類が必要ない貨物であっても、輸出側は船積み書類を作成する手間がかかります。
輸入側はそれを受け取って転送するだけで済むので楽です。
しかし、私が怖いのは輸出よりも輸入のほうです。
なぜなら、輸入は輸出とは違って、関税や消費税の支払いが発生するからです。
評価加算申告が漏れたりした場合、正しく税金を納めていないことになります。
税関の事後調査でそれが発覚すると、ペナルティーとして追徴税や延滞税を払う必要があります。
輸入者は正しい輸入申告がなにかを理解していなければいけません。
輸入を担当しているのに「評価加算?なにそれ?」という状態であれば、すぐに調べてください。
もしかしたら今のあなたの輸入には必要のないことかもしれません。
しかし、知っていて損なことでは決してありません。
正しい輸入申告の準備をおこない、正しく税金を納めましょう。