【FTA/EPA】特恵税率適用までの流れ#2 特恵税率の対象かを調べる


前回の記事でHSコードの調べ方を説明しました。
→特恵税率適用までの流れ#1

次は、そのHSコードが特恵税率の対象かどうかを調べてみましょう。

MFN税率と特恵税率の違い

MFN税率とは

WTO税率と呼ばれることもあります。
WTO加盟国や二国間条約(自由貿易協定以外)で最恵国待遇(Most Favored Nation treatment)を与えると約束した二国間の間で適用される税率のことです。

WTOでは加盟国に対して、どの加盟国からの製品であっても同じ税率を使うよう定めています。
とある1つの国の原産品のみを関税フリーにするのは原則禁止ということです。
反対にある1つの国が気に入らないからと言って、関税を高く設定するのも禁止です。

「原則」禁止です。・・・ということで例外もあります。
その例外のひとつがEPA税率です。

EPA税率とは

関税をはじめとする貿易関係の制限をすべて撤廃する!という条件で、自由貿易地域をつくることが認められています。
二国間協定だけでなく、EUやASEANなどの地域的なものも含みます。

たとえ、国同士の通商条約があったとしても、このような自由貿易協定でなければMFN税率のほうが該当します。

あくまでも「自由貿易」をうたった協定がWTOの例外となります。

EPA税率は各協定によって定められた特定原産地証明書を輸入申告時に提出することで、適用となります。

EPAが締結されているからといって、自動的にEPA税率が適用されるわけではありません。
なにもしなければ、MFN税率などが適用されます。

MFN税率とEPA税率の関係性

自由貿易をうたったEPAに基づく税率だから、MFN税率よりEPA税率のほうが低いよね
といって、特定原産地証明書を取りに行くのはちょっと待ってください。

わざわざEPA税率を適用させなくてもいい場合があるのです。

パターン1:MFN関税が0%

そもそもの関税率が0%の場合です。EPA税率を考える必要はありません。

パターン2:EPA関税の方が高い場合

稀にあります。MFN税率が5%なのに、EPA税率が10%の場合などです。
これは逆転現象とよばれます。

では、自由貿易をうたっているはずのEPA税率のほうが高くなるのはなぜでしょうか?

これは多くの場合が、段階的な減税方式を採用しているときに発生します。

一部の品目では、数年をかけて段階的に税率を下げていくという方式をとることがあります。

例)1年目:税率10%、2年目:税率9%、3年目:税率8% …〃… 11年目:税率0%

このような場合でMFN関税が5%の場合、協定6年目まではMFN関税のほうが得です。
しかし、7年目以降はEPA税率の方が得になります。
(6年目は同じ5%になりますが、原産地証明書発行の手間がない分、MFN関税の方がお得になります。)

このようにある一定年数を経るまではEPA税率のほうが高いという逆転現象が起きてしまうのです。

そのため、減税方式の場合は、いつからEPA税率を適用させるべきかを含めて確認することが大切です。

EPA税率が2つ以上あるケース

EPA税率は1つとは限りません。複数の協定に含まれている国もあります。

EPA税率が2つ存在する国
マレーシア、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ベトナム

2019年2月からCPTPP適用となるベトナムはEPA税率が3つ存在することになります。

では、この場合どのEPA税率を使用するべきでしょうか?

基本的にどの税率を使用しても構いません。
新しい協定ができたからといって、古い協定がなくなるわけではありません。
それぞれの協定の税率を確認して低い方を適用させれば大丈夫です。

ただし、こちらでも税率の逆転現象が発生する場合があります。
2020年まではこっちのEPA税率の方が低いけど、2021年からはこっちのEPAの方がお得だなぁ・・・などです。

EPAが複数ある場合は、念のためすべての税率を確認するようにしてください。

また、マレーシア、ベトナム、メキシコ、チリ、ペルーからの日本への輸入には一般特恵税率(GSP)を使用することも可能です。

EPAが流行っているからといって、なにがなんでもEPAを適用させる必要はありませんよ。

EPA税率の調べ方

EPA税率の調べ方は2種類あります。

方法1:FedEx社の「World Tariff」を利用する

税率を調べるには、「World Tariff」を使用することがおすすめです。
→簡単&無料!世界各国の輸入関税を知る方法

JETROさんのサイトから登録することで、日本居住者は無料でこのデータベースを使用することができます。

このサイトでは、MFN税率やEPA税率がわかるだけでなく、減税方式の場合のEPA税率の経過年ごとの税率を知ることができるのです。

登録したことがない方は、まず見てみてください。

方法2:協定の譲許表を調べる

譲許表とは、協定ごとの個別品目の関税撤廃・削減の方法を記載した表です。

2019年1月現在、日EU EPAはまだ始まっていません。
そのため、World Tariffにはまだ情報が載っていません。
このような場合は、日EU EPAの譲許表を見ることでEPA税率を調べることができます。
→日EU EPAで関税撤廃の対象になる品目は?

World Tariffにない情報は、このような譲許表を調べることになります。

まとめ

EPA税率はわかりましたか?
そして、そのEPA税率は一番お得なものでしたか?

お得だとわかったら、次は協定を適用させるための規則を調べましょう!