運賃やリスクの所在をアルファベット3文字で表してくれるインコタームズ。でも似たようなアルファベットが多いからどれがどれだかわかんなくなっちゃう・・・。
せっかくの取引条件を明確にしてくれているルールなのに、使う側が理解していなければ意味がないですよね。まぎらわしいかもしれませんが、何の略なのかを意識しながらおぼえましょう!
今回はDグループ編です。
インコタームズ2010のDグループ:DAT/DAP/DDP
インコタームズ2010年版からDグループはDAT、DAP、DDPの3種類の条件になりました。それまでは5種類(DEQ、DAF、DES、DDU、DDP)存在していたので、これでも少なくなったほうです。
D条件は基本的に輸出者側の負担が大きい条件群です。
Eグループの反対というイメージを持っていただければいいかと思います。
まずは、最新版で規定されている3条件について紹介していきます。
DAT条件:港付近で荷卸しするまで!
DAT条件英語 :Delivered at Terminal
日本語:ターミナル持込渡
ここでのTerminalとは輸入者側が指定した港やその港のターミナルです。
この場所に荷卸ししたタイミングで、費用とリスクの負担が輸入者に移転します。
場所が港でもターミナルでも該当しますので、コンテナ船でも在来船でも適用させることができる条件です。
DAP条件:仕向地まで届けるまで!でも関税は払ってあげないよ!
DAP条件英語 :Delivered at Place
日本語:仕向地持込渡
輸入者の指定した仕向地へ運ぶまでの費用・リスクを輸出者が負います。輸入国側の通関手配は輸出者が行いますが、通関費用にかかった費用および関税は輸入者が支払います。
通関手配を輸出側でした上で、通関費用は輸入者負担という状況はなかなかイメージしにくいですよね。該当する例として、クーリエで元払い発送して関税は輸入者に払ってもらうパターンがあります。
DDP条件:仕向地まで責任持つし、関税も払ってあげる!
DDP条件英語 :Delivered Duty Paid
日本語:関税込持込渡
輸出者の責任が一番重い条件がDDPです。
輸入者の指定先まで届ける上に、通関費用と関税も輸出者が負担します。
なんで太っ腹なんだ!と思いますが、実際はその費用が商品単価に加味されていることでしょう。
しかし、商品単価に加味すると言っても、現地でかかる関税のパーセンテージは輸出側には把握しづらいものです。
輸入者側から教えてもらっていたり、協定で関税フリーとわかっていたりすれば話は別ですけどね。
いずれにせよ、輸出者側の負担が大きいため、あまり採用する状況は多くないかと思います。
クーリエで関税も輸出者持ちで手配するという状況が現実的です。
インコタームズ2000:DAF/DES/DEQ/DDU/DDP
DAF英語:Delivered At Frontier
日本語:国境持込渡し条件
国境周辺の指定場所で、費用負担と危険負担が輸出者から輸入者に移転するという条件です。
…と言われてイメージできますか?
私はできません!
日本に住んでいる日本人からすると「国境」という単語自体になじみがありませんよね。だって周りは海だもの。境目ってどこよ。
ということで、この条件は島国の日本向きではなく、大陸にある国向きの条件です。
「陸続きのお隣の国に輸出する際に、国境付近の指定場所で受け渡す」
どうでしょう?これならイメージできるのではないでしょうか?
日本で貿易をするのであれば、必要のない条件でした。
2000年版のインコタームズですし、今後も使うことはなさそうです。
DES
英語:Delivered Ex Ship
日本語:本船持込渡し条件
仕向地の港までの費用・リスクを輸出者が負います。
港までということですが、これは荷卸しを含みません。
船が港に着いた時点で責任が移転します。
荷卸しからは輸入者負担となります。
DEQ
英語:Delivered Ex Quay
日本語:埠頭持込渡し条件
仕向地の埠頭に貨物を陸揚げするまでの費用・リスク負担を輸出者が負います。
荷卸しが完了した時点で負担が輸入者に移転します。
輸出者が荷卸しをするのがDEQ。しないのがDESです。
どちらも使わないかと思いますので、おぼえなくても大丈夫です。
DDU
英語:Delivered Duty Unpaid
日本語:関税抜き持込渡し条件
輸入者の指定先に届けるまでの費用とリスクを輸出者が負担します。ただし、関税は輸入者が支払います。
自分の国の税金は自分で払えや!ということでしょうか。DDPとの違いは関税を払わないということだけです。
DDP
英語:Delivered Duty Paid
日本語:関税込持込渡し条件
これは2010年度版のDDPと同じです。すべてを輸出者が負担する条件です。
2000年度版と2010年度版で変わらなかった唯一のD条件です。
2000年度版と2010年版の違い
それでは2000年度版と2010年度版を比較してみましょう。2000年版:DEQ、DAF、DES、DDU、DDP
2010年版:DAT、DAP、DDP
条件が5つから3つに減りました。
DEQ → DAT
埠頭(Quay)という表現からターミナル(Terminal)という表現になりました。港付近で荷卸しをした時点で費用とリスクが移転するという点では同じです。
現状に合わせて、コンテナ船でも在来船でも使うことのできる表現に変更になったようです。
DAF+DES+DDP → DAP
国境だろうが、港までだろうが、指定倉庫までだろうが、輸入者の“指定先”には変わりない!ということでしょうか。”Place”というとても簡単な1単語にまとまりました。
DDP=DDP
唯一、変更がなかったのがDDPです。
輸出者が関税をも払うというオンリーワンの条件のため、残存となりました。
まとめ
2010年度版のインコタームズで3つにまとまったDグループですが、実際に使用することは少ないかと思います。E条件同様にクーリエで発送するときや、輸出した商品に不備があってその代替品を送るときぐらいでしょうか。
頻度は少ないかと思いますが、もしもの時のために頭の片隅にでも置いておいてくださいね。