インコタームズ Fグループとは?|FCA・FAS・FOB



運賃やリスクの所在をアルファベット3文字で表してくれるインコタームズ。でも似たようなアルファベットが多いからどれがどれだかわかんなくなっちゃう・・・。

せっかくの取引条件を明確にしてくれているルールなのに、使う側が理解していなければ意味がないですよね。まぎらわしいかもしれませんが、何の略なのかを意識しながらおぼえましょう!

今回はFグループ編です。

Fグループ

FグループにはFCAFASFOBの3種類の条件が含まれます。

これらの条件は基本的に輸出者が輸入者の指定した運送人に貨物を引き渡した時点で費用やリスクの責任が輸入者側に移るというものです。費用とリスクが移転するタイミングが同じなので、比較的わかりやすい条件かと思います。

わかりやすいって言っても3つもあるじゃん!ということで、さらに2つにわけます。

■コンテナ船で輸送:FCA
■在来船で輸送:FAS、FOB

それではそれぞれの条件について細かく見ていきましょう。

FCA条件とは

FCA条件
英語 :Free Carrier
日本語:運送人渡

Free Carrierということで、費用フリーで運送人に渡すというイメージを持っていただければ大丈夫です。ここでいう費用は運送人に渡したあとの費用です。渡すまでの通関料は輸出者負担ですのでご注意ください。

運送人に引き渡す場所はコンテナヤード(CY)やコンテナフレートステーション(CFS)が該当し、コンテナ輸送する貨物に適した条件です。


FAS条件とは

FAS条件
英語 :Free Alongside Ship
日本語:船側渡し条件

【Alongside(副)そばに、横づけに】ということで、船に横付けしてからはフリーになる条件です。
船に横付けというタイミングなので通関は終わっているはずです。
そのため、通関費用は輸出者負担になります。
一方で、船に積みこむ作業からは輸入者負担になります。

なんで船に横付けしたタイミング?と思われるかもしれません。
CYから船に横付けするまでのリスクが心配ですよね。
輸出者としてみれば、CYに入れたらその貨物は手が離れたと感じやすいものです。私がそうです。ただ、これはコンテナ輸送しか取り扱わない人の考え方のようです。

これはどういういことかというと、FASは木材などコンテナに入れずに輸送する貨物に適した条件なんです。

このようなコンテナに入れない貨物の場合は運送人に引き渡したことになるタイミングが船に横付けしたときになります。よって、FASという条件を使用することが適切と言えます。

FOB条件とは

FOB条件
英語 :Free on Board
日本語:本船甲板渡し条件

こちらもFAS同様に在来船に載せる貨物に対して適した条件です。

費用とリスクの負担が移転するタイミングは貨物が本船の船上に置かれたときです。
これは2010年版のインコタームズからの文言です。2000年版では手すりをこえたときでした。

乙仲さんからこんな質問をされたことがあります。

「コンテナを船に積もうとクレーンで吊っているときにコンテナが落下した場合、インコタームズ2000年版のFOB条件なら損害はどっちが負うことになったと思います?」

これは、落下したのが手すりをこえた船の上なら輸入者側、陸側に落ちたら輸出者側ですって。
本当に条件通りなんですが、なんか運次第ですよね・・・。

一方、現在の2010年度版であれば船に置かれたタイミングなので、積載中の事故であれば輸出者負担になってしまします。
積載の段階まで責任を負わなくて済むよう、コンテナであればFCA条件を利用して早めにコストとリスクの移転をしてしまいましょう。

コンテナだけどFOB条件で取引してるよ?

コンテナ取引ならFCA条件を、と言いましたが、実際はコンテナ輸送でもFOB条件を利用している方も多いかと思います。

はい、私もそうです。

長年の商習慣からFCAではなくFOBを利用していることが多いのが実態です。
乙仲さんとやり取りするときにもFOBで通じます。
というか、FCAなんて言ったことも聞いたこともありません。

とはいえ、上で例を挙げたような積載途中の事故のことを考えると、FCAを使用したほうがいいのは間違いありません。
適切なタイミングでFCA契約に移行していくことをおすすめします。

FOB条件はどのような取引に向いているの?

こちらから輸出するときにFグループの条件にすると、運賃費用を単価に含まなくて済むので貨物を安い価格で提示することができ、価格競争力を上げることができると言えます。

一方、Fグループの条件で輸入をおこなうと、商品単価に近い価格で仕入れることができ、過剰な手数料を輸出者側からぼったくられる心配がなくなります。

ただし、輸出者側にフォワーダーを指示する手間がかかりますので、信頼できる会社とのやりとりではCグループの条件をつかって楽をするのもひとつの手です。

まとめ

Fグループは輸出者の手間が少なくてすむ条件です。
また、輸入者にとっても商品本来の価格に近い金額で仕入れることができます。

ある程度の貿易経験があれば、Eグループの条件ではなくFグループの条件のほうが取引しやすいはずです。

ただし、取引先にコンテナ輸送にも関わらずFOB条件でと言われた場合には、本来のFOB条件を指しているのか、単にFCAのことをFOBと呼んでいるのか確認することが必要です。

普段のやり取りはFOBと発言してもいいかと思いますが、契約書などでは正式な条件を記載してくださいね。