トランプ関税とは?
トランプ関税とはアメリカのトランプ大統領による一連の関税政策のことを指します。
そもそも、トランプ大統領は2016年の大統領選挙時の演説から貿易協定の改定や再交渉を主張していました。その発言通り、就任後は貿易協定に対して見直しを進めました。
NAFTAに関しては、今までにアメリカがサインした中で最悪の条件の協定だと非難し、カナダとメキシコに協定を終了させたいと告げていました。
TPPはアメリカ経済をむしばむものだとして、アメリカ大統領に就任したわずか3日後にはTPPからの離脱書に署名しました。
しかし、これら自由貿易協定を否定するにとどまらず、2018年からは貿易摩擦を引き起こすような追加関税を次々と実施しはじめたのです。
トランプ関税の事例と影響
トランプ関税の例には下記のようなものがあります。
2018年
1月:ソーラーパネルと洗濯機に30~50%の関税を付加
3月:中国や日本などの鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を付加
6月:鉄鋼やアルミニウムの関税賦課がEU、カナダ、メキシコにも広がる
中国からの輸入品に対して500億ドルの製品、800品目に25%の関税をかける
このアメリカの行動に対抗して、黙っている国ばかりではありません。一部の国は報復関税を実施しました。
■カナダ
2018年7月1日よりアメリカから輸入する299品目に対して、報復関税を実施。
■EU
2018年6月22日、30億ドルを超える180品目のアメリカ製品に対して報復関税を実施。対象品目には鉄鋼、アルミニウム、農産物、洗濯機、化粧品などを含む。
■中国
アメリカ製大豆の輸入を抑制。その後、貿易戦争へと発展。
■メキシコ
約30億ドル相当のアメリカ製品に報復関税を実施。鉄鋼、豚肉、チーズ、ウイスキーなどが対象。
鉄鋼とアルミニウム
2018年3月1日、トランプ大統領は鉄に25%、アルミニウムに10%の関税をかけるつもりだと発表しました。そして1週間後の3月8日、トランプ大統領は15日後に追加関税を発動させる旨の署名をおこないました。この時点では中国や日本が対象で、EUやカナダ、メキシコはこの関税の対象外でした。しかし、5月31日に対象国に加えられてしまいました。
結局、この関税から除外されたのは、韓国、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジルの4か国のみです。
トランプ大統領は1962年通商拡大法232条(国防条項)の権限を盾にこの政策を進めています。
1962年通商拡大法232条についてはこちら
これは国を守るために必要な状況下において発動させるものであり、めったに使われることはありません。1995年にWTOが発足してからというものは使われたことがありません。
さらにトランプ大統領はこの政策を「国防のため」という発言をしていないこともあり、中国やEUはWTOにこの政策は問題だと訴えています。
アメリカのメリットとは
「強いアメリカ」を目指しているトランプ大統領ですが、このような強硬な通商政策をとることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
アメリカの経済アナリストたちは口をそろえて、鉄やアルミに高関税をかけることは、アメリカの繁栄にはつながらないと言っています。得るものよりも害のほうが大きいそうです。
この政策で得をするのは鉄やアルミを生産する人たちのみで、そのほかの業種では雇用の損失を生む可能性が高いそうです。
2002年にブッシュ大統領が鉄に関税をかけましたが、この際も約15万人が雇用を失ったと推定されています。
これらの政策はアメリカのメリットというよりも、中間選挙を前にした有権者へのパフォーマンスだと考えられています。しかし、デメリットのほうが多くなっている以上、効果的な政策だと言えるのでしょうか・・・。
今後のトランプ大統領の政策
アメリカ国内の製造業を脅かす他国からの輸入品を制限する一方で、アメリカ企業が工場をアメリカ国外へと移転させることも非難しています。
ビスケット”オレオ”の製造で有名なMondelez Internationalがアメリカの工場を閉鎖し、メキシコに移管すると発表した際には、「オレオ・ボイコットをする」と発言し、波紋が広がりました。
これらの政策は中間選挙前のパフォーマンスと言われているため、中間選挙の結果次第では、大きく方向転換する可能性もあります。
トランプ大統領の発言には引き続き注目していく必要がありそうです。