非関税障壁とは?



国は貿易をおこなうことで他国の情報や技術を入手することができます。それらを用いることで、自国の発展へとつなげることができます。一方で、他国から大量の安い商品が輸入されてしまったら、国内製品が売れなくなってしまい、産業が停滞する可能性があります。

そのため、自国の産業を守るためには、時には他国からの輸入を制限しなければいけないこともあります。

それでは、他国からの輸入を制限したい場合、どのような対応をとることができるのでしょうか?

まず思い浮かぶのは商品に高い関税をかけることです。

実際、今回の米中の貿易戦争では、お互いに関税を掛け合うことで、相手国からの輸入を制限しようとしています。

しかし、他国からの輸入を制限する方法は関税以外にもあります。そのような関税をかける以外の方法を「非関税障壁」と呼びます。

今回はこの非関税障壁のお話です。

非関税障壁とは

非関税障壁とは関税適用以外の方法で商品やサービスの輸出入を制限する貿易障壁のことです。非関税措置とも呼ばれます。

非関税障壁と非関税措置に違いはありません。呼び方の違いだけです。

英語ではNTB(Non-Tariff Barriers)もしくはNTMs(Non-Tariff Measures)と表現されます。

非関税障壁の例

WTOによると非関税障壁は下記のような行為を指します。

- 商品ごとに数量を制限し、輸入を許可制にする

各省庁の許可を得て初めて輸入ができるようになります。

- 船積み前検査を指示する

「輸出」を少しでも遅らせる手段です。

- 輸入時の検査基準や認証基準を厳しくする。

こちらは、「輸入」を少しでも遅らせる手段です。

この手段に関しては、わざとではなくても国内制度として存在する規格基準や衛生規則が外国製品の流入を妨げているケースもあるようです。

- 疑似関税をかける

疑似関税とは輸入課徴金や国境税などが該当します。

これらは関税とは別の名前がついているものの、輸入時にかかる税金です。事実上、関税と同じタイミングでかかる税金ですので、疑似関税と呼ばれます。

- 国内製品を優先購入することを義務づける

例としてはバイ・アメリカン法があります。政府調達や公共工事の資材では国内調達を優先することを義務づけた法律です。


非関税障壁のメリット・デメリット

関税率はMFN税率やWTO関税で定められています。これらの税率を急に上げることはできません。国を守るためという名目で「追加関税」をかけることはできます。しかし、今回のアメリカのように他の国々から非難を浴びることになります。

一方で、非関税障壁は、自国の法律や輸入工程の1つとして組み込むため、目立ちにくいのが特徴です。

また、貿易協定の交渉をするにあたり、関税の引き下げを要求することはできますが、その国の法律で定められている非関税障壁に関して他国が口をはさむことはできません。

そのため、他国に干渉されずに国を守る手段としては優れていると言えます。

しかし、反対に輸出国側からすれば、邪魔なものでしかありません。貿易摩擦の原因となっても仕方がないでしょう。

非関税障壁を感じた実例

先日、南アメリカの国々向けに商品を輸出する場合に輸入者が輸入時に税金をいくら払うことになるのかを調べました。

すると、とある国では、MFN関税で約40%、その他の税金で約50%かかることがわかりました。残念ながらFTAやEPAを締結していない国だったため、関税もそのまま40%です。

1万円の商品を輸入するとしたら、9千円の税金がかかるんですよ!?

商品がほぼ倍の価値になってしまいます。

とてもではありませんが、真っ先に売り込みに行きたい国ではありません。価格で折り合いがつかない可能性が高いためです。だったら、他のもっと税率が低い国から売り込みをはじめますよ。

ここでいう「その他の税金」が非関税障壁になりえます。もちろんGSTなどの消費税にあたる税金もありますので、50%すべてが障壁とはいいません。しかし、輸出ターゲット国からはずすのには十分の税率です。障壁を感じるには十分でした。


まとめ

私の体験のように、輸出者側からすれば非関税障壁を理由に売り込みを断念することがあります。

相手国の関税を調べることはあっても、その他の税金まで注目することは少ないかもしれません。しかし、その他の税金が非関税障壁となる可能性は十分あります。

輸入相手を探す際には関税だけでなく、それ以外の障壁がないかを調べてください。輸出戦略を立てる上で、必要な情報になりますよ。