就任以降、トランプ政権の通商政策に注目が集まっていますね。
米国通商代表部(USTR=United States Trade Representative)代表のロバート・ライトハイザー氏は9月18日に、米国の通商政策の優先事項として下記、4点を挙げています。
1. 通称政策の転換
2. 貿易赤字の是正
3. 中国の脅威とWTOが抱える問題
4. 貿易協定の精査
1に通商政策の転換とありますが、トランプ政権下でどのように転換させることができるのでしょうか??
今回はアメリカ大統領が持っている一方的な通商政策措置について調べてみました。
アメリカ大統領が持っている通商政策に対する権限
アメリカ大統領は通商政策方面で大きな権限を持っています。
これは急激な輸入増加にともなう安全保障上の悪影響を防いだり、貿易相手国の不公平な取引に即座に対応したりするためです。
中には、議会の承認を得ることなく、関税の引き上げや輸入規制等の一方的措置を取ることを可能にする法律条項もあります。
1930年関税法337条
知的財産権の侵害など何らかの不正的な行為による輸入品の流入から国内産業を保護するため、輸入差し止めや販売停止を認める
(※大統領が任命する委員で構成される国際貿易委員会(ITC)が判断・命令する権限をもつ)
1962年通商拡大法232条(国防条項)
米国商務相が国家安全保障を危うくするほどの数量、または国家安全保障を危うくする恐れのある状況で当該産品が輸入されていると危惧されるときに調査をすることができる。調査後、大統領は関税の引き上げまたはその他の輸入措置制限をとることができる
2017年4月にはこの条項に基づき、鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に及ぼす影響について調査を開始しました。
1974年通商法201条
業界団体、企業又は労働組合を含む産業を代表する者から国内産業への重大な損害またはそのおそれがあるとの申請を受けた場合、米国国際貿易委員会(ITC)の調査の結果、関税引き上げ、関税割引等のセーフガード措置をとることを認める。
1974年通商法301条
スーパー301条とも呼ばれる条項です。
貿易協定違反などの不公正な貿易慣行に対し、相手国と交渉を行い、それでも是正されないと判断した場合は報復措置として、関税や輸入制限を課すことを認めるものです。
1988年の修正により、従来は大統領の権限であった認定および制裁措置発動の決定権限が米国通商代表部(USTR)に委譲されたため、他の政治問題から切り離して制裁措置を発動することが容易くなりました。
1988~89年には日本をターゲットに復活した経緯があり、トランプ政権は2017年8月21日に、相手国を中国としてこの条項に基づく談話を発表しました。
1974年通商法122条
巨大かつ重大な米国の国際収支赤字に対処するため、経常収支赤字対象国に対し、15%を超えない輸入課徴金や150日以内の輸入制限を課すことを認めるという条項です。
アメリカの貿易赤字のおよそ半分は中国(3470億ドル)ですが、日本も中国に次いで2位の貿易赤字国(689億ドル)です。
このことからトランプ政権は日本もターゲットとして見ているようです。
2015年貿易円滑化及び貿易執行法
オバマ政権下で成立した法律です。
「大幅な対米貿易黒字(対米黒字が年間200億ドル超)、「大幅な経常黒字(年間の経常黒字がGDP費3%超)」、「継続的で一方的な為替介入(年間でのネットでの外貨買いが対GDP比2%超)」を満たす国と二国間協議を行うとされています。
この協議を以てしても状況が是正されない場合には、対応措置をとるための手続きについても規定されています。
1917年敵国通商禁止法 / 1977年国際緊急経済権限法
戦時、もしくは緊急事態の際、大統領に商業に関し広範な権限を付与することを目的にしている。調査の必要すらなしに外国の資産凍結、交易の禁止などを行う事が出来るとされています。
今後のトランプ政権はどうなるの?
上記のように、アメリカ大統領は通商政策を変換できる法律を十分にもっています。
今までで何らかの話や動きがあったのは、
・1962年通商拡大法232条(国防条項)
・1974年通商法301条(スーパー301条)
・1974年通商法122条
です。
スーパー301条は中国を対象としていますが、通商法122条は日本もターゲットになりうるようです。
トランプ政権には今後も注目していきましょう。