【日EU EPA】自己申告制度の利用方法


日EU経済連携協定では自己申告制度が採用されています。
自己申告制度では他のEPAのように輸出時に特定原産地証明書を取得する必要はありません。
日オーストラリアEPAでも自己申告制度が採用されていましたが、こちらは第三者証明制度を利用することもできました。

では、特定原産地証明書なしでどのように申告をすればいいのでしょうか?

自己申告制度とは

日アセアンEPAなどでは、輸入者がEPA税率を適用して輸入するためには、輸出者が取得した特定原産地証明書を輸入地の税関に提出する必要があります。

しかし、日EU EPAでは他のEPAのように日本商工会議所から特定原産地証明書を取得する必要はありません。

第三者機関の証明ではなく、輸出者や輸入者自らが申告することで、EPA税率を適用してもらうことができるのです。

参考:第三者申告制度との違い

自己申告の事前準備

まず、勘違いしないでほしいことがあります。

自己申告なので特定原産地証明書を取得しませんが、日本原産品(輸入であればEU原産品)であることの立証は必須です。

自己申告だからと言って「日本で作ってるから、日本製でしょ」というノリで申告してはいけません。

自己申告制度であっても、EPAはEPAです。

日EU EPAの原産地規則に基づいた日本原産品であれば、申告できます。
原産地規則に満たなければ、日本で作っていようが、EPA税率の適用対象とは認められません。

日本商工会議所に対して原産性を証明するのと同レベルの調査や書類が必要です。

自己申告の方法

原産性を証明できる準備が整ったら、輸入者が輸入国の税関に申請をしてください。

申請の方法は2パターンあります。

①「輸出者によって作成された原産地に関する申告」に基づく申請

輸出者がインボイスや商業書類に規定の文言を記載する方法です。
この文言は、協定上は英語を含む24か国語のどの言語を用いてもOKで、現地語に訳す必要はないとされています。だから、日本語で書いてもいいはずです。

しかし、乙仲と情報交換をしていた感じだと、「英語にしておいたほうがいいよね~」という結論になりました。

だって、フランス税関さんやドイツ税関さんが日本語の申告文を読めるとは思いませんもん。
規定の文言なので察してくれないこともないでしょうが、不要なトラブルは避けたいものです。

私は英語の文言で申告する予定です(2019年1月30日現在)。

②「輸入者の知識」に基づく申請

輸入者が輸出者の代わりに、①と同等の情報を記載した書類を提出する方法です。
日本の輸入者が申告する場合の書類のフォーマットは存在します。
http://www.customs.go.jp/kaisei/youshiki/form_C/C5292-4.pdf

これは日本税関から公表されている任意の様式です。
あくまでも自己申告ですので、別の書式で申告することもできます。
ただ、このフォーマットを用いれば、必要事項の記載漏れを指摘されることはないでしょう。

よほどの事情がなければ、これを使うことをオススメします。

とはいえ、輸入者の力だけでは、輸入する品の原産性を証明することは難しいのが現実です。

「ドイツで生産してもらったからドイツ製!」ではありません。

繰り返してしまいますが、「日EU EPAの原産地規則に基づいてEU製品かどうか」を証明しなければいけません。
この証明には、原材料に関する知識や生産にかかったコストなどの情報が必要です。
たとえ、輸出者・輸入者が関連会社であっても、入手できない情報はあります。

たいていの場合は①で申請することになるでしょう。

検認とは?

自己申告をするにあたって、申告前にどこかに原産性の根拠書類を提出するわけではありません。

じゃあ、本当に日本製かバレなくない?バレないなら・・・。

というように、EPA制度を悪用する人が出てくるかもしれません。
そのため、これを取り締まるための制度があります。

それが検認です。

もし、日本からEUに輸出した「日本原産品」に対して、EUの税関が疑いを持った場合、EUの税関は日本税関に照会をすることができます。

日本の輸出者は日本税関からの問い合わせに対応すれば大丈夫です。
日本語で対処できるので、とても簡単ですね。

もし、日本税関から問い合わせがきたとしても、事前に作っておいた根拠書類を提出すれば大丈夫です。
普段、他のEPAで日本商工会議所に提出しているレベルの書類がそろっていれば、不備はないはずです。
回答期限は10カ月ですが、すぐに提出してしまいましょう。

提出できる書類がない!なんてことはあり得ないと思いますが、もし10カ月以内に原産性を証明できなければ、EU税関は特恵待遇を否認することができます

書類の不備や故意ではないミスによるものであればまだしも、全く用意していなかった場合は日本税関さんから目をつけられても仕方ありません。
今後の輸出入に影響が出ることは覚悟しましょう。

このようなことにならないように事前準備はしっかりしておいてくださいね。

まとめ

自己申告制度は、他のEPAのように第三者機関から原産地証明書を取得しなくて良いため、コスト的にも作業的にも負担が減りました。

適切に利用して、EPA税率を享受しましょう。