2018年5月8日、トランプ大統領はイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開すると発表しました。
→経済制裁とは?
この発表で再び注目されることになった「イラン核合意」。
そもそもどんな合意だったのか、ご存知でしょうか?
今回はイラン核合意についてまとめてみました。
イラン核合意とは?
2015年に米英仏独ロ中の6カ国とイランが結んだ合意です。この合意は、イランが核開発を大幅に制限する代わりに、アメリカなどがそれまでおこなっていた経済制裁を緩和するものです。
■イラン
- 核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器用プルトニウムを15年間は生産しない
- 10トンあった貯蔵濃縮ウランを300キロに削減する
- 1万9千基あった遠心分離機を10年間は6104基に限定する
■米英仏独ロ中
- アメリカなどの各国は金融制裁やイラン産原油の取引制限などを解除する
これによりイランは核開発を再開したとしても、核爆弾1発分の原料の生産に最低1年はかかるレベルに能力を制限されることになりました。
制限をされたとはいえ、核開発能力自体は維持されることになりました。
きっかけ
この合意は、2002年にイランでウラン濃縮施設が発見されたことがきっかけです。実際に、イランは20%高濃縮ウランの自国製造をおこなっていました。しかし、イラン政府はこのウランは原子力発電に用いるためだと説明しました。
これに対して、疑いを持ったのがアメリカです。
通常の原子力発電で使用するには低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランは必要ではないためです。
そのため、核兵器を作ろうとしているのではないかと疑念をいだきました。
一方で、原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であり、意見がわかれました。
長くにわたった交渉の末、2015年にイランは米英仏独中露の6か国との間で、核開発における合意事項を締結したのです。
トランプ大統領とイラン核合意
トランプ大統領は大統領選の時から、イラン核合意からの離脱を公約に挙げていました。離脱の理由として、トランプ大統領は合意の不完全性をあげています。
不完全とはどういういうことか?
この合意は最大15年を期限として、イランの核開発を制限するという内容になっています。そのため、トランプ大統領はこの期限である15年が経てば、再びイランが核開発を進めていくのではないかと警戒しているのです。
また、アメリカでは今年の11月に中間選挙がおこなわれます。
トランプ大統領はその選挙にむけて、政権の強さをアピールしておく必要があります。
今回の件も、そのパフォーマンスの1つではないかと推測されます。
そもそも、1979年のイランアメリカ大使館人質事件以来、アメリカ人の中にはイランを快く思っていない層がいます。
そういった層に対しては、かなりのアピールとなったことでしょう。
今後、トランプ大統領はイランの核開発を完全に阻止できるような条件を提示してくることが考えられます。
今後のトランプ発言にも注目が必要です。
日本とイランの関係
アメリカとイランは国交が断絶状態にあります。それでは、日本とイランの関係はどうなのでしょうか?
実は、日本とイランの関係は良好です。
イランには親日家が多くいるとも言われています。
しかし、日本はアメリカの行動に追随する傾向にあります。
アメリカがイランに厳しい経済制裁を科すとしたら、どうなるでしょうか?
もちろん、EU諸国が完全にアメリカの行動を否定し続ければ、日本も無視していくことができるでしょう。
ただ一部の国でもアメリカに追随してしまったら、日本も何らかの行動を起こす可能性が高くなります。
イランの顧客と取引がある身としては、日本はイランとこれまでの通り、いい関係を持っていてほしいです。
今後のトランプ政権の動向だけでなく、EU諸国の対応にも注目していきたいと思います。