貿易業務にたずさわっていると耳にするHSコード。
通関で必要と聞いたことがあるけど、実際どのような仕組みなの?
今回は例を挙げて、HSコードの調べ方について説明していきます。
このHSコードの調べ方がわかると、乙仲さんが商品について詳しく問いあわせをしてくる気持ちもわかるかもしれませんよ?
HSコードとは?
HSコード(=Harmonized System Code)とは、世界中にあふれているあらゆる物品を分類した番号のことです。6ケタのコードは世界共通で、どの国で輸出入しようとも、基本的には同じ番号で通関が行われます。
そして、輸入時にはそのコードで定められた関税を支払うことになります。
国によってはさらに3~4ケタを細分化のために追加しており、その番号はさまざまです。
HSコードは、税関ホームページでは統計品目番号と記載されています。
他にもタリフコード(Tariff code)と呼ぶこともあります。
ちなみにアメリカでは、HSコードを簡素化させたHTSUSA(=Harmonized Tariff Schedule USA)コードを使用しているようです。
HSコードの見方
日本では世界共通の6ケタに日本独自の3ケタをプラスした9ケタで定められています。それぞれのケタの呼び方は下記の通りです。類:上2ケタのこと
項:上4ケタのこと
号:上6ケタのこと
統計細分:下3ケタのこと
この名称とケタ数を覚えておくと、特定原産地証明の取得条件を調べているときに、意味がわかりやすいかと思います。
それでは名称を紹介したところで、実際に例を挙げてHSコードを調べてみようと思います。
実際にHSコードを調べてみよう!
今回は『エレキギター』について調べてみようと思います。HSコードを調べるには実行関税率表が必須です。別ウィンドウでこのページを開いて、表を見ながら記事を読み進めていただけると、よりわかりやすいかと思います。
類の推測
まずは類に当たりをつけることから始まります。ちなみに、類・項・号のどの段階でも、いきなり1つには絞ってはいけません。
必ず2つ以上は選出して、より近いものを選ぶようにしてください。
今回のお題は『エレキギター』ということで、「エレキ」と「ギター」の2つの要素があると考えます。
①「エレキ」という特性を重視した場合
第85類の「電気機器および~」に該当します。電化製品が数多く明記されている類です。②「ギター」という商品性を重視した場合
第92類の「楽器並びにその部分品~」に該当します。さまざまな楽器が明記されている類です。
2つに該当しそうな場合はどちらを選べばいいのか?
それはより具体的にその物品の特性を表している方です。
「エレキギター」は「電気機器」というよりも「楽器」のほうがよりその特性を表しているのではないでしょうか。
ということで、第92項だと推測しました。
それでは、第92類の中身を見て、合っていそうであれば項と号を推測していこうと思います。
項の推測
第92類を見てみると、まず目に入ってきました!「92.02 その他の弦楽器(例えば、ギター、バイオリン、ハープ)」
「ギター」って書いてありますね!
少なくとも、92類で問題なさそうです。
類の推測でも説明した通り、より具体的にその物品の特性を表しているものが優先されますが、名前がそのものズバリ書いてあれば、それが該当します。
ということで、92.02項の中から、さらに号を推測していきます。
号の推測
92.02項の中身を見ると号は2種類に分かれているようです。「9202.10 弓で弾くもの」
「9202.90 その他のもの」
エレキギターに弓は使いませんね。指かピックですね。
ということで、「9202.10」には該当しません。
消去法で「9202.90」になります。
ちなみに、実際に調べてみると、消去法を使うことが多いです。
具体的なものが上から順に書かれているので、「これも違う、これでもない…。」とみていくと最後の「その他」に落ち着くことが多いのです。
統計番号の推測
9202.90号の中身を見てみると、さらに2つにわかれています。「9202.90 010 -ギター」
「9202.90 010 -その他のもの」
これが最後の2択です。はっきりと明記されていますね。
答え
エレキギターのHSコード(9ケタ)は9202.90 010です!…と答えたら不正解です。通関士試験なら落ちます。不合格です。
流れとしては不自然なことはなかったと思います。
ただ、1つだけやってはいけないことをしています。
私は類の推定のところで
“ちなみに、類・項・号のどの段階でも、いきなり1つには絞ってはいけません。必ず2つ以上は選出して、より近いものを選ぶようにしてください。”
と書きました。
しかし、ある段階で、いきなり1つに絞ってしまいました。
それは、項の推測のところです。
「ギター」の文字を見つけてしまったので、他に調べることをしていません。
これが致命傷となってしまいました。
再検証
もっと丁寧に第92項を調べるとこんな項目がありました。「92.07 電気的に音を発生し又は増幅する楽器(例えば、オルガン、ギター及びアコーディオン)」
「ギター」とはっきり書かれているのがここにもあった!?(;゚Д゚)
まず初めに、エレキギターの要素として「エレキ」と「ギター」の2つの要素で考えましたよね。
なんと、この項にはその両方の要素がしっかりと書かれているのです。
間違って選んでしまった92.02項よりも、より具体的に特性を生かしている項目です。
こちらがより適しているのは間違いないでしょう。
先ほどの流れのように、号と統計番号を推定していくとこうなります。
号: 9207.90 その他のもの
統計番号: (9207.90)010 -電気ギター
今度こそ見つけました。「電気ギター」が今回探していたもので間違いないでしょう。
よって、エレキギターの正しいHSコード(9ケタ)は9207.90 010です。
ちなみに先ほどの9202.90 010は、アコースティックギターを指すんでしょうね。
まとめ
ふと思いついた物品のHSコードを試しに調べてみてください。本当に難しいです。
通関士試験でも、これを間違えてしまうがために、何回も不合格を味わってしまう人が多いのです。
もし、自分で調べた場合でも、必ず乙仲さんと答え合わせをするようにしてくださいね。
輸出するときに、乙仲さんに「この商品の材質は何ですか?用途は何ですか?」としつこく聞かれたことはありませんか?
しつこく質問してくる理由はこのHSコードを決定するために必要な情報だからです。
物品によって、類を材質で考えたり、用途で考えたり、さまざまな方向からHSコードを探っていくのです。
では、通関業者に正しくHSコードを選んでもらうにはどうすればいいのでしょうか?
それには、まず、輸出者自身が商品の特性を熟知していることが重要です。
「自分の説明不足のために、正確でないHSコードで進んでしまい、高い関税がかかってしまうことになった」
なんてことになったら問題ですよね。
こんなことがないように出荷するものには責任を持つようしてください。
乙仲さんのしつこい質問は正しいHSコードを調べるためだった!