天津浜海新区倉庫爆発事故
2015年8月12日(日本時間で13日)天津港にある民間の危険物倉庫が爆発しました。最初は火災でしたが、突然大規模な爆発が少なくとも2度起こったのです。爆発した場所には直径100メートルにもおよぶ巨大な穴ができてしまったそうです。爆発地点から4キロの場所にある日本メーカーの工場の窓が割れるほどの爆風でした。
中国メディアによると、およそ40種類、3000トンの化学薬品が保管されていたそうです。化学薬品はGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)に従って作成された、SDS(安全データシート)によって、情報が提供される仕組みとなっています。
⇒SDSとは?
SDSの内容に基づいて、管理すれば危険物とはいえ、安全に保管しておくことは可能になります。しかし、今回の事故ではSDSが軽視されていたように感じました。その理由は2つです。
①ずさんな倉庫管理
この倉庫の持ち主である物流会社は相当ずさんな管理をしていたようです。危険物を長時間、野ざらしにしたり、コンテナの中身がわからなったりすることもあったようです。危険物によっては温度や湿度を管理しなければいけません。それら適切な管理方法はSDSに記載されているはずですので、知ることは容易だったはずです。それなのに、夏場にコンテナで野ざらしにするなんて…。内部温度はいったいどれほどの高温だったのでしょうか…。元々、いつ事故が起きてもおかしくない状況だったのでしょうね。
②不適切な消火活動
SDSには、万一、火災が起きた場合の対応の仕方が記載されています。化学薬品の火災では、水では消すことができない場合があります。消せないどころか、猛毒のガスや引火性のガスが発生したりすることがあります。まさにその悪い方向に作用してしまったのが、この事故でした。火災から始まったこの事故は不適切な消火活動により、最悪な2次災害が発生してしまったのです。
中国への危険物発送の現状
この事故は中国の情報統制もあり、十分な報道がされていません。ただ、貿易にたずさわっている者として知っているのは、この事故以降、中国の会社が危険物を輸入するのはとてもきびしくなったということです。
私も、たかが20缶ほどのインクを輸出するのに、2か月ほど中国側の手続きが終わるまで待っていました。購買の担当者がすでに仕入れてしまっていたので、「もし、中国で承認が取れずに発送できなかったら、このインクどうするんだろ?」と不安にもなりました。
SDSの記事でもお話ししましたが、日本側で購入してしまう、あるいは準備をする前に、輸入側で本当に輸入することができるのかを確認することが大切です。
このまま、輸入に厳しい状況が続くのであれば、今後は危険物に該当するようなものは中国国内で手配していくのが主流になるのかもしれませんね。
天津港は当時、世界第4位の貿易港でした。それだけ大きな港だからこそ事故の規模が大きかったとも言えますが、大きな港ですら管理ができていないとも言えます。小さな港の管理はどうなっているんでしょうね。開発途上国の港の管理実態についても、不安になる事故でした。この事件を反面教師に、各国の港の管理が厳格化されることを望みます。