それがRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)こと、地域的な包括経済連携協定です。
RCEPの読み方は「アールセップ」です。
そしてついに、2022年1月1日に日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国間で、まずは発効されることになりました。
※追記※
2022年2月1日 韓国発効
2022年3月18日 マレーシア発効
今回はRCEPの概要とポイントを解説していきますよ。
RCEPの参加国
RCEPは日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)からなる経済連携協定です。
当初、インドも交渉に参加していましたが、2019年11月から交渉不参加となってしまいました。その後もインドに復帰を呼びかけましたが、参加しないままでした。
その結果、17か国で発行することになりました
一方で、協定は発効直後からインドの加入ができるように規定をもうけているので、インドが加入に前向きになり次第、参加できるようになっています。
※インド以外の国は協定発効後18ヶ月を経過後に加入可能になるので、インド専用の特別待遇です。
参加国の規模が世界のどれ程を占めるかというと、人口・GDP・輸出貿易額とも世界全体の3割にあたります。
規模
人口ベース
22.7億人(2019年)
世界全体の約3割
GDPベース
25.8兆米ドル(2019年)
世界全体の約3割
貿易総額(輸出)ベース
5.5兆米ドル(2019年)
世界全体の3割
日本の貿易総額で言えば約5割を占める地域の経済連携協定となるため、今後活用すべき重要な貿易協定となりそうです。
実際の輸出入に対する影響
輸出: 日本からRCEP協定国へ
工業製品
14ヵ国全体で約92%の品目の関税撤廃を獲得しました。
特に中国、韓国で関税フリーなる品目が大幅に増えました。
中国:8%→86%
韓国:19%→92%
段階的撤廃、つまり21年目までに撤廃される品目も含む数字ですが、ゆくゆくは、ほとんどの品目が関税撤廃になりますね。
農林水産品
日本が輸出に関心をもっていた品目について関税の即時撤廃(一部、段階的撤廃)を獲得しました
中国向け:パックご飯やホタテなど
韓国向け:キャンディーや板チョコなどの菓子類
インドネシア向け:牛肉や醤油
輸入: RCEP協定国から日本へ
工業製品
化学工業製品、繊維製品などについて、関税を即時撤廃(一部、段階的撤廃)することになりました。
農林水産品
日本の重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を関税削減・撤廃から除外させ、守ることができました。
原産地規則
日アセアン協定と同じく、「国原産品」の考え方を採用します。
日本で生産された製品なら「日本製品」、中国で生産された製品なら「中国製品です」。
「何を当たり前のことを言ってるの?」と思われたかもしれませんが、これがTPP11だと考え方が違うのです。
TPP11の場合、日本で生産された製品も「TPP11原産品」、メキシコで生産された製品も「TPP11原産品」として扱われ、国を特定しない考え方を採用しているのです。
これが「協定原産品」という考え方です。
さて、原産地規定は日アセアン協定等と同様に3パターンあります。
a) 完全生産品
b) 原産材料からなる製品
c) 品目別規則を満たす製品
累積規定や僅少の規定も採用されています。
僅少規定はFOB価格の10%以下が要件となっています。
大体は日ASEAN協定と同じだと思っていればいいようです。
ただし、一部の品目では細かいルールが違っています。
例えば、日ASEAN協定では繊維製品に対して、2工程ルールが存在していました。
しかし、RCEP協定では1工程ルールが採用されているので、製織した国を問わず、非原産品の生地さえ使用していれば、CC適用で原産地規則を満たすことができるのです。
この場合では日ASEANより適用範囲が広がったので、今後は日ASEANよりもRCEPを利用した方がいいかもしれません。
反対に、品目によってはRECPのほうが適用できる範囲が狭くなったものもあるかもしれません。
品目ごとに他協定との比較、確認をおこない、よりメリットのある協定を採用しましょう。
原産地証明書制度
RCEPでは下記3パターンの原産地証明制度が採用されています。
a) 第三者証明制度
b) 認定輸出者制度
c) 輸出者または生産者による自己申告 ※輸入国側で採用されている場合のみ
さらに、日本では輸入者自己申告制度も導入します。
つまり、輸出時には(a),(b),(c)の3種類の制度を利用可能、輸入時には(a),(b),(c)+輸入者自己申告制度の4種類を利用可能ということになります。
今まで他の協定で採用されていた4つすべての証明制度が採用されています。
自分の扱いやすい方法を採用できるので、使い勝手がいいですね。
いつから利用できるのか?
ASEAN構成国である署名国10か国のうち少なくとも6か国、ASEAN以外の署名国5か国のうち少なくとも3か国が批准書をASEAN事務局長に提出してから60日後にそれらの署名国の間で発効します。
つまり
① ASEAN(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)のうち、6か国
② ASEAN以外(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)のうち、3か国
の批准が必要で、ASEANの5か国とその他3か国のうち8番目の国が批准してから60日後に発効となります。
そしてついに2021年11月2日に発効要件が満たされました!
批准書の提出を終えたのは、日本、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国です。
これら10か国について2022年1月1日に発効します。
韓国など、他の参加国はまだ発効ではないので注意しましょう。
よくある質問
Q1. RCEP協定が発効後、他のEPAはどうなるのか?
A1. これまでのEPAも残ります。好きなEPAを利用してください。
Q2. 発効日前に船積みされた貨物には適用できないのか?
A2. いいえ。発効日前に船積みされた貨物であっても、発効日後に原産地証明書などを揃えて輸入申告をすれば、適用可能。
ただし、原産地証明書の作成、申請ができるのは協定発行後になる。
Q3. 暫8とRCEPの併用は可能か?
A3. 可能。RCEP税率を適用したうえで、暫8による減税計算をおこなうことができる。
まとめ
この協定で日本が今まで協定を結んでいなかった、中国、韓国との協定を結ぶことができました。
特に中国は日本の最大の貿易国であり、協定によって関税フリーの税番が増えることは、日本の輸入者にとってメリットが大きく、さらに輸入が増える可能性もあります。
対中国は2022年1月1日から発効されるので、上手に利用していきましょう。
日中韓の3国協定の交渉もあったのですが、なかなかまとまらなかったので、RCEPという形で協定が結べてよかったですね。