特恵関税適用国から中国除外の流れ!? 今後の卒業予定国は!?

乙仲さんから特恵関税適用国条件の見直しがあったとの情報をいただきました。昨年末には情報が開示されていたようですが、気づきませんでした…。

2019年には中国などが全面卒業予定とのことで、中国からの輸入品の日本流通価格が上がる可能性も十分にありえますね。今回は、そもそも特恵関税とは何か?から今後の流れまでをまとめてみます。



そもそも特恵関税制度とは?



特恵関税制度とは、開発途上国を原産地とする一部の輸入品について、一般の関税よりも低い税率を適用させることのできるシステムです。一部の国からの輸入品に対して、別にまれた関税が適用される制度といったところでしょうか。


特別特恵関税制度とは?



一般関税よりも低い関税、もしくは無税を適用させるのが特恵関税ですが、ほぼすべての品目に対して無税が適用されるのが、特別特恵関税制度です。この制度は後発開発途上国(LDC=Least Developed Country)が対象となります。


低い関税が適用できるとどうなるのか?


関税とは輸入申告時に支払う税金のことです。この関税が安くすむと、輸入にかかった経費が少なくなります。

ざっくりとした説明をすると、100円の同じ性能の商品を輸入する場合、関税0%で輸入できれば「100円+消費税」で済みます。

一方、関税3%であれば、「100円+関税3円+消費税」がかかります。

実際には、もう少し計算が複雑ですが、イメージとしてはこんな感じです。関税が安ければ、安い経費で商品を輸入でき、日本国内の流通価格も安く設定できるのです。


なぜ一部の国に限定されているのか?


この制度は、開発途上国の経済発展の支援が目的です。

輸入品の関税が低ければ、そこから輸入をしたほうが輸入者にとってメリットがあるというのは上述したとおりですが、このメリットを生かして、開発途上国の輸出産業を活発化させて、国を成長させることができます。発展途上国には経済発展のチャンスがあり、先進国には安く輸入貨物を仕入れることができるWin-Winの関係が成立しているのです。


【特恵適用国・地域(2016年4月現在)】
2016年の4月時点では、138の国と5地域が特恵受益国となっています。
このうち、47の国が後発開発途上国であり、特別特恵関税が適用されます。

2015年度の日本の輸入相手国上位10カ国に入っている国の中で、この特恵関税適用されている国は、下記の通りです。

・中華人民共和国(香港地域及びマカオ地域を除く。)
・タイ
・マレーシア


特恵関税制度の卒業とは ~現状~


特恵関税制度の受益国対象から外れることを、「卒業」と表現するようです。

この制度は開発途上国を対象としているため、ある程度に経済発展した国はあるタイミングで適用外とさせる必要があります。この「あるタイミング」というのが現状では、国際復興開発銀行が公表する統計で「高所得国」に該当したときでした。一部の品目のみ対象外になるのが高所得国に該当したときで、全品目での卒業(いわゆる全面卒業)になるのが3年連続高所得国に該当したときでした。

基準となる1人当たりの国民総所得(GNI)

12,736ドル以上:「高所得国」
4,125ドル~12,736ドル:「高中所得国」
1,045ドル~4,125ドル:「低中所得国」
1,045ドル以下:「低所得国」


今後の卒業基準


昨年2016年12月に、卒業基準の見直しがありました。今後の基準は下記の通りです。

①世銀統計の「高所得国」に該当しているかどうか
②世銀統計の「高中所得国」に該当し、かつ、世界の総輸出額に占める当該国の輸出額の割合が1%以上である国

今までとの違いは②が追加になったことです。

②に該当する国でイメージしやすいのは中国です。2009年以降、中国は貿易輸出額ランキング1位の国になっています。なのに!特恵関税受益国になっています。「中国は十分発展してるのになんでだろ?」と不思議に思われていた方も多いのではないでしょうか?実は、中国はまだ「高所得国」にはなっていないのです。2015年の中国のGNIは7,930ドルであり、「高中所得国」の位置づけです。都会部と農村部の経済格差が要因かと思われます。

このように貿易で発展しているが、GNI基準では発展していないと認められる国を卒業させるために②が追加されたのだと思います。


新しい基準の実施時期に関しては下記の通りです。

- 部分卒業:2018年4月~
- 全面卒業:2019年4月~


今後の卒業予定国


部分卒業が見込まれる品目のほとんどは中国です。一部の品目で、ブラジルとマレーシアが挙げられています。確定になるのは今年2017年4~5頃の予定です。

全面卒業が見込まれている国は、ブラジル・マレーシア・メキシコ・中国・タイの5カ国です。2019年までにガクッと所得が落ち込んだり、貿易額が減ってしまったりした場合は対象外になりますので、あくまでも現時点での統計からの推測の状態です。今後のこの5カ国の経済状況は要チェックです。


まとめ


全面卒業になると、輸入にかかる費用が増加するため、日本に流通するときの価格も必然と上がってしまうことでしょう。消費者目線で言えば、物価が上がってしまうのは困る話ですね。

一方、貿易実務という観点からみると、新基準の実施までに新たな仕入れ国を確保するということも一つの手段かと思います。値上げに踏み切るか、新たに輸入国を開拓するかはそれぞれの会社次第かと思います。

また、新基準実施直前は駆け込み輸入ということで、コンテナが取り合いになる可能性もあると思います。もともと3月はコンテナの需要が高い時期ですので、早め早めにブッキングするようにしましょう。